大切な存在と想い











どうして…

どうして怒るのさ?

近藤さんの為に殿内を殺したのに、どうして土方さんは怒るの?
寧ろ褒められる事をしたんだよ?なんで、怒られなくちゃいけないのさ。
わからないよ…―――。


「土方と言う男は貴様に対して過保護すぎるな」

「……え…?」


物思いに耽っていた僕は芹沢が背後に立っていることに気付かずにいた。だから、唐突に話し掛けられて相手が芹沢であるにも関わらず僕は素っ頓狂な声を出してしまう。
彼と目が合った瞬間、反射的に立ち上がって離れようとしたが、それを阻止するかのように腕を掴まれてしまった。


「…貴様も土方が邪魔だと思うだろう?」

「…はぁ?いきなり何なんですか貴方は?」


芹沢の鋭い眼差しが僕を射抜く。
彼に負けないように僕も睨み返したが、芹沢は僕の虚勢に気が付いているのか、小馬鹿にしたように鼻で笑う。


「思っているのだろう?土方が邪魔で仕方がない、と…」

「まぁ……そうですね…邪魔ですよ…土方さんは」


嘘を吐く必要もないので、素直に答えれば芹沢は愉快そうに声を上げて笑う。
ああ、不愉快だ。
眉間に皺を寄せてあからさまな態度をとれば、彼は掴んでいた僕の手を離す。
そして、僕に手を差し出してきた。


「…ならば、俺と一緒に土方を殺ろうじゃないか」

「……は…?」


怪訝に芹沢の顔と差し出された手を交互に見た僕は意味がわからないと首を振る。
何で僕が敵である貴方と手を組まなくてはいけないんですか、と口にすれば更に芹沢が大笑いをする。


「敵とは言え、時には協力関係になることも手の内だ」

「…ふぅん?じゃあ、僕がアンタに協力すれば土方さんは消せるの?」

「ああ、そうだ」


差し出された手を見つめて少しの間、考えた僕は芹沢に手を伸ばした。
この手を取れば邪魔な土方が、消せる。
沖田の手が触れる瞬間、芹沢の口元が僅かに歪んだ。






――――パシン…






芹沢の手を弾いた僕は殺気を込めた眼差しで彼を睨み付けた。


「ほう、俺の誘いをことわるのか…?」


驚いたような感心したような顔で芹沢が僕を見下ろす。
だけど、僕は怯むことなく彼を見上げた。


「確かに、土方さんは邪魔ですよ…けれど、消すつもりはありません」

「何故だ?邪魔なら、疎いなら消したほうが良いだろう?」

「邪魔で疎くても……僕は俺様で不器用な土方さんが…」

「―――芹沢さん…アンタここでなにしてるんだ」


僕の言葉を遮るように現われたのは噂の人―――土方さんだった。
土方さんは険しい表情をして僕と芹沢さんに歩み寄ってくると有無を言わさずに僕の腕を引っ張る。


「…ちょっ…土方さん?」


いきなり引っ張られた僕はよろけて倒れそうになったけど、土方さんが僕の身体を支えてくれた。


「芹沢さん、今後は総司に近付かないでもらおうか…」

「…ふん…貴様はつくづく甘いな…」

「何とでも言え。俺にとって総司は護りたい、大切な存在なんだよ」

「大切な存在、か…貴様……否、貴様らはとことん俺を笑わせてくれる…」


身を翻す芹沢は去りぎわに僕と土方さんを肩越しで一瞥する。


「…精々、仲良くやっているのだな。だが、何れ貴様たちを壊してやろう」

「…壊されるものか」


土方さんの刺さるような視線を受けてもなお、芹沢は余裕綽々で目を細めるとゆっくりとした足取りで去っていった。
彼の気配が感じられなくなった僕は土方さんから離れようとしたが、土方さんはそれを許さず、僕の腕を思いっきりひいては身体を抱き締める。


「…土方、さん?」

「…さっきの続きを…言ってくれ…」

「………え…?」


耳元で囁かれ、擽ったくて肩を竦めれば土方の笑い声が耳に入る。


「…俺のことが……何なんだ…?」

「………っ…!!」


先程、言おうとしたことが頭の中に流れてきて僕は顔を紅くした。
なかなか口を開かない僕に焦れたのか土方さんが更に腕の力を入れて僕を抱き締める。


「……総司…」


言え、と目で促された僕は意を決して自信の想いを呟いた。


「…その……好き、です…」

「よく聞こえなかった」

「…だからっ…僕は貴方の事が好き…―――!!」


気付いたときには土方さんに唇を奪われていた。
驚いて目を見張った僕だけれど、少しして落ち着くと土方さんからの口付けを貪っていた。



「…俺も…お前の事が好きだ…」


二つの影が重なる。
邪魔な存在だった土方さんをいつの間にか好いていた僕。
この想いが実なんて、思いもしなかった。



ねぇ、土方さん。
僕も護るよ。
近藤さんだけじゃない、大切な貴方も命に代えてでも護ってみせる―――。






―大切な存在と想い―










**後書き**

薊桜鈴様、お待たせしましたっ!!相互記念小説が出来上がりました!!
芹沢さん絡みでの土沖と言うことでこんな風になりました……が、芹沢さんのキャラが良く分からなくて別人になってるかもしれません…あと、話の内容も良く分からないことになってます…orz
駄文&駄作で良ければ是非貰って下さい!!
そして改めて相互ありがとうございましたっ!!









「一滴ノ想ヒ」の輝翔瑠菜様から相互記念にいただきました。
「黎明録」についてのお話をさせてもらった直後でしたので……
芹沢さん絡みの土方×沖田をリクしてしまいました。
素敵なSSを本当にありがとうございます。
亀更新サイトで申し訳ないですが、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。