わかりあえる日まで
この京へとやって来てからどれだけの時間が経っただろう?
最初は戸惑ってばかりだった……
今までいた世界とは全然違うし、あかねちゃんと天真先輩以外はみんな知らない人たちばかりで怖かった。
それに何より、この世界では金髪碧眼の者は人間扱いされない……
“鬼”
外を歩けば出会う者たちにそう言われ敵視される。
そんな世界に僕の居場所なんてなくて……
泣いて逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
けれど今は大分京の世界にも慣れはじめていた。
まだまだ鬼扱いされる事もあるし、不安要素はたくさんある……
だけど……
この京で色んな人たちと出会って、最初は見た目だけで怖がられたり、睨まれたり、嫌われたりして。
そんな人たちに自分の事を分かってもらおうと、逃げ出さずに一生懸命向き合って、少しずつ打ち解けて。
ゆっくりではあるけれど、この京の人たちとも仲良くなれた。
特に八葉に選ばれた人たちとはもう大分親しく話せるようになっていた。
最初は分かり合えなくても頑張ればお互い笑い合える日が来る。
それがなんだか嬉しい。
この京に来る前にいじめられていた時には考えもしなかった事。
自分を嫌っている人たちと分かり合う事。
無理だと諦めて逃げてばかりじゃ駄目なんだと気づかされた。
頑張れば出来ない事はない。
だからね……
きっと諦めずにいれば、来るはずなんだ……
鬼の一族とも分かり合える日が……
ねえセフルくん……
君は僕が八葉だと知った時、とても悲しそうな顔をしていたね……
とてもつらそうで……
僕を利用したり陥れようとしたりしていたはずなのに……
どうしてなんだろう?
ほんの少しは僕の事、友達だと思ってくれていたのかな?
それとももっと違う何かがあってあんな顔をしていたのだろうか?
今の僕には分からない……
だから教えてよ……
君の思っている事。
君の悩みや不安も全部。
弱音を吐いたっていい。
もっと色んな事を話して……
お互いに理解を深める事が出来たら……
きっと僕たちの間に立ち塞がる壁も乗り越えていける。
人と鬼が争いあう日々から抜け出せるよ。
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何なんだ!?
このイライラは!?
そうだ!
全部あいつが……
詩紋が悪いんだ!!
最初は友達だって思ってたのに!!
こんなに他の奴と仲良くなれたのは初めてだったのに!!
裏切られた気分でいっぱいになった……
あいつなんて……
もう友達なんかじゃない!!
あいつは敵だったんだから……
そう八葉はみんなお館様の敵だ。
お館様の敵は僕の敵だ。
だからあいつの事なんかぐちゃぐちゃにしてやる!
壊してやるよあいつの事!
………………
頭ではそう思っているのに……
何でだ!?
おかしいんだ……
胸が苦しくて、張り裂けそうな……
僕の知らない感情がぐるぐると体の中を巡ってる。
本当にあいつの友達になりたかったのか?
嘘だ!
僕にそんな感情はもうない!
違う違う違う!
思いっきり頭の中で詩紋の事を否定した。
でも何なんだ……
ちっともあいつの顔が頭から離れない。
あいつの事を苦しめてやりたいと思うのに……
あいつが苦しむ顔を思い浮かべると悲しい気持ちになる……
この気持ちは何なんだ!?
嘘だ……
今一瞬もう一度あいつに会って、あいつの手に触れて、あいつの笑顔を見たいなんて思ってしまっただなんて……
嘘だ……
僕はそんな事思ったりはしない!
忘れろ忘れろ忘れろ!
詩紋の事を友達だなんて仲間だなんて思った事なんて……
………………
何なんだ!?
この感情は!?
わからない……
わからないんだ……
一体僕はどうすればいいんだ……
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セフルくんの初恋。
自分の気持ちに気付くにはもう少し時間が必要なご様子……
Fin.
携帯サイトの拍手お礼SSで過去に書いたものです。
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