秋の日の朝に
ヒノエが朝起きて部屋を出て最初に見た光景がこれだった。
濡れ縁にいたのは弁慶と九郎。
何やら話をしているようだ。
朝っぱらから二人きりでいる場面を突きつけられてヒノエは最悪の気分。
「いや……だからその……お前とだな……」
九郎がもじもじしながら言いにくそうに話をしていた。
いらついたのでヒノエが即行で話の邪魔に入る。
「何?こんな所で何の話してんのさ?」
二人がヒノエに気づき話を中断してそちらを見た。
「「ヒノエ」」
声がはもった。
それがまたいらつく。
「で、何の話?」
ヒノエは眉間に皺を寄せて問う。
「な、何でもない!」
ヒノエにじと〜っと睨まれて九郎は顔を赤く染めながら慌ててそう言った。
そうして居心地が悪くなったため逃げるようにしてその場を去っていった。
残ったのはぽけ〜っと突っ立っている弁慶……
ヒノエが去っていく九郎の背中を睨んだあと視線を弁慶へと移す。
「九郎……あんなに慌ててどうしたんでしょうか?」
弁慶が首を傾げていた。
「……何の話してたわけ?」
ヒノエはまだそれが気になっていて弁慶に聞いた。
「いえ……大した事じゃありませんよ。ただこの時期紅葉が綺麗だからと……今度一緒に見に行かないかと……九郎がそう言ってきたんですよ。じゃあみんなで行きましょうかと言ったんですが……。二人がどうとか……口ごもっていてよくわからない事を言っていました……。何だったんでしょうね……」
「ふ〜ん……紅葉ねぇ……」
弁慶は九郎が何を思ってそんな話をしたのかがわからない様子だった。しかしヒノエは弁慶の口からそう聞いただけで先ほど九郎が顔を赤くして慌てていた理由がわかってしまった。
「こんな時はあんたが自分自身の事には鈍感でいてくれてよかったと言えなくもないかな……オレの事には早く気づいて欲しいけどね」
そう吐き捨ててヒノエは九郎の去っていった方とは逆の方へと歩いていった。
残された弁慶はヒノエの言葉にはてなを浮かべて立ち尽くす。
「九郎もヒノエも一体何なんでしょうね」
秋風が寝起きの身体にひんやりとした空気を運んできて思わず震えた。
弁慶の目の前にひらりと落ちてきたのは赤く染まった紅葉の葉。
「二人共、そんなに紅葉を見に行きたいのでしょうか?では今度神子たちも誘ってみんなの都合の良い日にでも遠出しましょうかね……」
まったくもって二人の気持ちなどわかっていない様子の弁慶だった。
Fin.
恋の三角関係とか争奪戦みたいなシチュエーションとか取り合ってみたりとかそういうのって結構好きみたいです。
九郎さんとヒノエくんなんてついついvsにしたくなってしまう組み合わせですね……
九郎さんの邪魔をするヒノエくんの図……とかいいですね……
もしくは九郎さんに余計なちょっかい出したり意地悪してみたりするヒノエくんとか……
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